講演概要 - Lean PQS™とQuality Ethos
INTERPHEX 2025で当社のLean PQS™をプレゼンしましたので、概要をお伝えします。
そのもととなるリーンGMPシステム(European Compliance Academy)は、企業がGMPに対する誤解や曲解から過剰な体制を強いていることに提言しているものです。ファーマプランニングでは自社が行っているギャップ分析にLean PQS™の概念を当て、新たな提言をしています。当社で行うギャップ分析は、一義的にはFDAやPMDA等目指す規制当局の査察対応に、製造所のレベル向上をはかるために行われるもので、上市先の規制に十分に対応することが重視されます。ところがその際に、規制の本質に照らして明らかに過剰(以下、オーバースペックと称す)な対応を見かけることが多々あり、これに対しては資源の有効活用といったQRMの原則に基づき提言しているところです。この独自なLean PQS™の概念は、Effort(資源)がそのままEffectiveness(効果)に結び付くものではなく、規制の本質を誤解することによって資源を浪費してしまうということが根底にあります。このEffortとEffectivenessとの間にEfficiency(効率)を介するというのがLean PQS™の概念となります。コンサルはEfficiencyを最大化してクライアントに提言する義務があり、そのためには規制の本質を十分に理解したプロフェッショナルであることが必須となります。令和5年9月1日に事務連絡として発出された「GMP監査マニュアル」の目的は製販の監査能力を上げるものであり、同時に、ここに書かれる解説を理解してオーバースペックな指導をしないようにすることも意図していたわけですが、果たしてその実効性はいかがなものでしょうか。
企業は規制要求水準を最低限満たした上でプラスα(FDAがいうところのベストプラクティス)の水準で整備するわけですが、どの段階で落とし込むかによって資源が決まり、Efficiencyを最大化することによって効率的かつ効果的なPQS体制をとることが可能となります。この水準の決定は企業の品質方針によって決まります。コンサルはクライアントの声(VOC)を聞くことによって最適な水準を設定します。その設定にはICH Q-Trioがツールとなります。
管理体制は、規制に書かれるWhat to do?からHow to do?に落とし込むための企業のPhilosophyに掛かります。何故その管理体制をとるのか、Philosophyは、すなわちWhy?です。このWhy?が品質方針として具現化されます。業界はかなり前からFDAが発したQuality Cultureに注視し、今、国内でも醸成度を測ることに追加的に資源をかけていますが、既にQuality CultureはPQSのシステムそのものに織り込まれており(FDA OPQ White Paper)、重複して何かをするものではないはずです。更にはシステムの醸成度評価はマネジメントレビューが担っています。もともとICH Q-Trioが検討された根底にはそういった求めが高まったからでした。PQSは品質に対する企業のガバナンス、Quality Cultureはその体制を展開するためにどう行動するのか(How?)であり、その体制のWhy?を司るのは、“Quality Ethos”といわれます。PQSがGMPに導入された現在、経営陣がQuality Ethosを明確に定義し、それを品質方針に表明することが、PQSが導入された現在、より重要なことになります。