GMP省令は、2021年8月に改正版が施行されたのはご存知のとおりです。グローバルに整合することと、検討以前に発生した不正製造問題に対応するために策定され、PQS、QRMやDIが加わっています。もっとも、PIC/S加盟前に通知レベルでQRMがGMPの一部として追加されており、今改正で省令に統合されたといったところです。
GCTP省令は、再生医療等製品が法に登場することを受けて公布されたわけですが、当時、GMP省令より一歩進んで、QRMやPQR等が入っていました。その影響もあってかGMP省令とは条ズレが生じ多少不便な印象ですが、カテゴリーが異なるので問題にはなりません。GCTP省令が検討された当時は、PIC/S GMPにQRMが登場していたわけですが、まだ、PQSはありませんでした。その後PQSが登場し、今度はGMP省令が一歩進んでの2025年2月現在、GCTP省令が改正されて同じレベルになるのはいつかという関心がもたれます。改正GCTP省令案は、前のブログにあるように治験製品GCTPと同タイミングで、同じ検討班で既に作成され、研究代表者から監麻課に提出されています。従って、治験製品宜しくGCTP省令もあとは発出のための事務処理次第ということになりますが、現時点で発出にかかわる正式な情報は得られていません。筆者はこの検討班にあって、たたき台の作成に関わりましたが、現GMP省令をみれば、読者の方はどのような形になるかは想定できるところです(検討班の成果物は治験製品GCTPと同じリンク先)。強いてGCTPの特徴と言えば、大きくは参考品と安定性モニタリングで、再生医療等製品独特の対応が必要となります。その他、省令上の文言ではなかなかわからないところ、製造現場では諸々解決すべき課題があるでしょう。バリデーションについては、GMP省令でのバリデーション指針に対して、再生医療等製品の施行通知にバリデーション等基準がありますが、「等」にはベリフィケーション(治験薬GMPのベリフィケーションとは別次元)が含まれ、このベリフィケーションは承認事項に直結する概念となります。
ファーマプランニングでは、再生関連の三極対応ギャップ分析の業務が増加しつつあり、ありがたいところですが、若干他極と比較すると…、FDAはいわゆるCGTP(CFR Title 21, Chapter I, Subchapter L, Part 1271, Subpart D)の§1271.150に規定されています。基本的には、CGMPもベースとしています。その他、Guidance for Industry “CGTP and Additional Requirements for Manufacturer of HCT/Ps”でQ&A形式に解説されています。EUにおいては、EudraLex Volume 4(GMP)の一部でPart IVがあり、いわゆるATMP GMPと言われるものです。関連して、PIC/SではAnnex 2AがPIC/S版のATMP GMPとなり、EU版とは相当程度内容が異なります(作成された経緯による:PIC/Sは医薬品のGMPをベースとして上乗せする考え)。PIC/S Annex 2Aは理論的には国内査察の参考としてリスクベースで考慮されうるものなので、改正GCTP省令案検討班では、Annex 2Aとのギャップ分析を行いました。大きな違いは出荷で、Annex 2AにはDecentralised Sitesという概念があり、例えば病院の近く等でサイトを持っていち早く患者様に届ける体制の枠組みを設けていますが、これはPIC/Sなので、管轄当局の規制が当然優先されます。Decentralised Sitesでは、その中でResponsible Siteを定義し、そこのAuthorised Person(EUのQP相当)がリリースを含めて他のサイトを管理するというものですが、現在の日本の許可に係る規制にはそぐわないものになっています。特に再生医療等製品では患者様の利益を考慮した体制ではあると思いますが、当局含めたステークホルダー間での議論が将来的課題となります。
開発面においては、欧米では日本のようにベリフィケーション項目という概念がないので、製品開発では医薬品と同様の考え方になります。再生医療関連はICHの対象になっていませんが、日本を含めたグローバルの流れを見ていると、企業ではCQA、CPP、QRM等Q8の概念が定着しつつあり、なかなかパラメータの特定が難しい性質をもつこういった製品では、かえってQbDアプローチの概念の活用が効果的なのかもしれないという印象を受けます。
再生医療関係については、引き続きブログを追加予定です。