リーンGMPシステムについて

Date

2025-02-18

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まだ、それほど件数はありませんが、ネットではリーンGMPシステムが議論されています。GMPガイドラインの誤解/曲解から、本来そこまでやらなくとも良いのにいわゆる過剰な体制をとり、結果リソース不足に喘いでいるという状況があります。このような事例では漠然と過剰と思いつつもどこが無駄なのかがわかっていない場合が多いでしょう。

先ず、規制要件に適合するのは当然の事で、それを前提としつつ、その上での議論となります。読者の方々は、査察で規制要件の議論はどれ位を占めるとお思いでしょうか。筆者の調査員の経験では一割もなく、ほぼ、製造所の裁量の範囲又はそれに近い領域での議論ではないかと思われます。これは、要求事項であるWhat to do?に対して、How to do?の次元と言われます。

Investigatorなら、Best practiceと呼んでいるものでしょう。ところが、(「GMP監査マニュアル」の作成で議論になったのですが)査察官や監査者はどこまで規制のメカニズムを理解し、製造所の裁量を尊重しているかは議論の余地があり、現にその指導に問題を抱えている製造所は少なくありません。

そこで、その製造所にとっての最適な解を評価するのがリーン製造規範で、ファーマプランニングでは、2023年よりLean PQS Assessment(LePA)©を実践し、製造所のGMP/GCTP体制のギャップ分析をしています。数値データのほぼない品質システムの評価はリーン手法が適しており、現在この分野ではQ-Trioの概念を基調とするのが適しています。ただし、損失コストの危険性もはらむので、規制の正しい理解と、被監査側や監査側両面での十分な経験を有していることがポイントとなります。

強い製造所を創るのは、最大限縛る事ではなく、リソースのパフォーマンスを最大化するための至適環境、そして何より、非合理な側面を排する事にあります。

執筆者

寶田 哲仁 (たからだ てつひと)

現職:株式会社ファーマプランニング シニアコンサルタント


1983年 持田製薬株式会社入社

27年間品質保証業務を経験、この間、製造管理者・品質保証責任者等経験

2016年独立行政法人医薬品医療機器総合機構

GMP・GCTP調査(シニア調査員等)の他、アジアトレーニングセンターにて東南アジア諸国等の査察官指導体制の確立及び運用に関わる

2021年 学校法人東京理科大学研究推進機構総合研究院究

ヒト細胞加工製品のQbDアプローチ関連の研究支援の他、知識管理・品質文化に関する研究

2023年 現職にて、GMP・GCTPコンサルティング(PMDA/FDA対応等)


過去、日本製薬工業協会(JPMA)品質委員会GMP部会委員、ICHでJPMAの専門家として Q7、Q8R、Q9、Q10のガイドライン/Q&Aの作成、PIC/S WGにてAnnex 2A作成、厚生労働科学研究等でGMP省令改正案、GMP監査マニュアル等の作成に関わる。

 現在、継続して、国立保健医療科学院医薬品医療機器の品質確保に関する研修で講師の一人として都道府県の薬事監視員教育に関わる。公益財団法人神戸医療産業都市推進機構外部アドバイザー(GCTP関連)