2025年7月付けでFDAから,以下のホワイトペーパーが出ています。
https://www.fda.gov/media/187861/download?attachment
Quality Management Initiatives in the Pharmaceutical Industry: An Economic Perspective
品質マネジメントが効率の向上やコスト削減を通じて事業成功の重要な要素であること,その実践が製品品質の改善や組織文化の醸成にも寄与してきた歴史的背景を踏まえ,製薬産業における成熟した品質マネジメントへの戦略的投資の価値を説明するために作成された。
本書はPart I不良のコスト削減といった経済的リターンを,Part IIで信頼性の高い供給やイノベーション推進、医薬品不足による社会的コストの緩和といった公衆衛生上のリターンを論じている。
Part Iから,4つのシナリオを概説する。
シナリオ1:Minimal Investment(最小限の投資)
- 特徴:品質マネジメントへの投資がほとんどない状態。
- 結果:
- 製品品質のばらつきや非効率な作業フローによる高コスト。
- エラー率や手直し率の高さ、リードタイム・サイクルタイムの遅延。
- 製品交換、従業員離職率の高さ、苦情対応件数の多さ。
- リコールやコンプライアンス違反による規制対応コスト、企業評判・株価の低下。
- 全体像:高コスト+低アウトプット・低収益・低利益。
シナリオ2:Suboptimal Investment(不十分な投資)
- 特徴:品質マネジメントへの投資を段階的に開始した状態。
- 取り組み例:
- 品質文化の醸成、予防保全の強化、従業員トレーニング、サプライヤ品質管理の成熟化。
- 効果:
- 不良品・廃棄・手直しの減少。
- 納期遵守率や納品完全率の改善。
- コスト削減とパフォーマンス向上による収益増加。
- 全体像:投資は最適ではないが、コスト減と成果向上でROIを確保可能。
シナリオ3:Optimal Investment(最適な投資)
- 特徴:品質マネジメントへの投資が最適水準に達した状態。
- 取り組み例:
- Lean Six Sigmaの導入、先進的製造技術の活用(例:デジタルツインによるスケジュール最適化)。
- 効果:
- 生産性40~50%向上、逸脱・歩留まり損失の大幅削減。
- コスト最小化と収益・利益・アウトプット最大化。
- 研究開発や設備投資への再投資による競争優位の確立。
- 全体像:成熟した品質マネジメントの恩恵を最大限享受し、持続的成長と高い信頼性を実現。
シナリオ4:Overinvestment(過剰投資)
- 特徴:最適水準を超える投資。
- 結果:
- 効率性やコスト削減の増分が得られず、総コストが再び上昇。
- 収益・利益の低下。
- 不必要に複雑で高コストな変更、意味のない高精度化、設備・人員・資材の過剰冗長化。
- 全体像:現実には起こりにくいが、過剰投資は投資効率を損なうリスク。
これは,先日筆者らがインターフェックスで解説したLean PQSTMと概念を同じくしています。
※なお正確な内容確認には本文を参照ください。