EU GMP第1章改訂版の公表について

Date

2025-09-09

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内容

EU GMP第1章の改訂案が公表されています。

https://health.ec.europa.eu/consultations/stakeholders-consultation-eudralex-volume-4-good-manufacturing-practice-guidelines-chapter-1_en

主な改正点は以下ですが,詳細は本文を参照してください。

原則(Principle)

リスクベースの医薬品供給不足予防・軽減活動を考慮すべきと明記された。→ 製造リスクが供給不足につながる場合を想定し、QRMに組み込む必要性が強調。

Pharmaceutical Quality System(PQS)

1.4 (viii)
有効なモニタリング・制御システムを設計・利用する際にQRMを活用する と追記。

1.4 (xviii)
品質リスクマネジメントと知識管理を用いて「早期警告システム」(early warning system)を確立し、品質/製造リスクや供給不足に対応できるようにする と追加。

Good Manufacturing Practice (GMP)

1.8 (v)
原材料供給者・委託先・サービス提供者など外部要因による供給リスクを適切に管理する と追加。

Product Quality Review (PQR)

1.10 (xviii–xxxi)
製造の有無に関わらず、レビューは必ず実施することが強調された。
製造バッチが少ない場合 → 前回レビューのトレンドデータを含める。
製造バッチが多い場合 → 前回レビューのトレンドデータも参考になる。
製造ゼロの場合 → 安定性、返品、苦情、リコール、逸脱、バリデーション関連事項、規制面をレビュー対象にする。

1.10 (32–35)
レビュー期間は製造キャンペーンに応じて調整可能。ただし手順書で規定すること。過去データを含めて頑健性を確保する。

1.10 (36–45)
製品群ごとのレビューは科学的根拠に基づき実施。ただし代表品のみのレビューは不可 と追記。

1.10 (46–49)
MAH(製造業者と異なる場合)は技術契約で役割・責任・戦略(例:製品群レビュー)を合意する必要あり と追加。

Quality Risk Management (QRM)

1.12–1.13
QRM はリスクベースの意思決定を支える体系的プロセスであり、製品ライフサイクルを通じて適用される と改訂。

1.14 (58–64)
「品質リスク」には製品供給への影響(患者への潜在的な害を含む)も含まれる。各拠点は供給リスクを自らの責任範囲で管理する必要がある と明文化。

1.15–1.17
リスクに応じた形式性の調整、主観性の低減、新知見の反映によるレビュー体制 を明示。

執筆者

寶田 哲仁 (たからだ てつひと)

現職:株式会社ファーマプランニング シニアコンサルタント


1983年 持田製薬株式会社入社

27年間品質保証業務を経験、この間、製造管理者・品質保証責任者等経験

2016年独立行政法人医薬品医療機器総合機構

GMP・GCTP調査(シニア調査員等)の他、アジアトレーニングセンターにて東南アジア諸国等の査察官指導体制の確立及び運用に関わる

2021年 学校法人東京理科大学研究推進機構総合研究院究

ヒト細胞加工製品のQbDアプローチ関連の研究支援の他、知識管理・品質文化に関する研究

2023年 現職にて、GMP・GCTPコンサルティング(PMDA/FDA対応等)


過去、日本製薬工業協会(JPMA)品質委員会GMP部会委員、ICHでJPMAの専門家として Q7、Q8R、Q9、Q10のガイドライン/Q&Aの作成、PIC/S WGにてAnnex 2A作成、厚生労働科学研究等でGMP省令改正案、GMP監査マニュアル等の作成に関わる。

 現在、継続して、国立保健医療科学院医薬品医療機器の品質確保に関する研修で講師の一人として都道府県の薬事監視員教育に関わる。公益財団法人神戸医療産業都市推進機構外部アドバイザー(GCTP関連)