Lean PQS™論考 その6 無駄な規定がなぜ増えるのか

Date

2025-10-17

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内容

規定を内在化するといっても、内在化するのに相応しくない無駄な規定がある。この無駄な規定にはどのような類型があるか。妥当性、整合性、運用性、記載の適切性の観点から以下の通り、整理することができる。

妥当性

・その手順を実行すると品質規格を満たすことができない

・法規・ガイドラインの意図を踏まえた規定となっていない

整合性

・他の手順と規定が矛盾している

・現場の運用と一致していない

運用性

・規定の運用が非常に非効率的

・規定によって発生する維持管理が容易ではない

記載の適切性

・規定が抽象すぎる

・規定が細かすぎる

次に、なぜこのような無駄な規定が生まれてしまうのか、発生源を整理したい。

最も典型的には、外部の監査・査察によっても無駄な規定が増える可能性がある。つまり、指摘事項に対応するために、無駄な規定が生まれていくということである。指摘事項が適切ではない場合もあるし、監査者と被監査者間のディスカッションが不十分であったり、指摘事項を適切に理解していないことによって引き起こされる。監査員や査察官に責任があると言いたいのではない。指摘事項は、あくまでディスカッションによって双方に同意されるべきものである。よって、そのディスカッションを経た指摘事項であるならば、それによって無駄が生じたとしても監査員や査察官の責任とは言えない。

つまり、自律と他律という観点から言えば、監査者によって指摘されたことに自律的に対応することができないことによって無駄が生じてしまうのである。指摘された内容の真意を理解し、自社のPQSにマッチするように対応を調整していくことが必要となる。そうしなければ、やがて体系化されていない継ぎ接ぎのPQSが出来上がってしまう。

もちろん、監査・査察以外にも逸脱や品質情報、自己点検、品質照査、マネジメントレビュー等の対応をきっかけに無駄な規定が発生することもあるだろう。例えば、QA部門と他部門、責任者と現場のディスカッションが不十分であることによって引き起こされる場合もある。

何れにしても「どこまでやれば十分か」といった尺度がなければ、世間の相場(「他社ではどうやっているか」)といった他律的な基準で対応しなければならない。重要なのは、組織の「十分性の尺度」を如何にして確立し浸透させるのか、ということである。