Lean PQS™論考 その7 Risk driven

Date

2026-03-31

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内容

GMP/PQSにおいて、Just sizeな対応の量をいかに特定すればよいだろうか?つまり、組織の「十分性の尺度」を如何にして確立するか、ということである。それは、リスクベースで考えるというのが答えになる。他律的に自らの組織の行動を決定するのではなく、リスク駆動(Risk driven)により行動を決定していく姿勢が求められる。

膨大な因子(ハザード)によってリスクが決定づけられる。組織の活動を階層化して分類したうえで、各階層のレベルでリスクをアセスメントして知識として体系化していく必要がある。そうすると、その組織に潜在するリスクがアセスメント(顕在化)され、自らの行動を決定づける拠り所となる。これによって、Just SizeのGMP/PQSを特定することができる。

各階層のレベルでリスクアセスメントをするというアプローチについて考えてみたい。ここで、GMP/PQSというものを便宜的に次の3階層に分ける。

・組織の階層

・製品プロセスの階層

・作業の階層

まず、組織の階層とは、品質保証体制、責任権限、教育訓練、変更管理、逸脱管理、CAPA、マネジメントレビューといった、企業全体の品質システムを支えるレベルである。この階層でのリスクは、個別作業の巧拙ではなく、仕組みそのものが適切に設計・運用されているかに関わる。たとえば、責任分担が曖昧である、意思決定が属人的である、品質情報が経営に十分エスカレーションされない、といった状態は、個別事象を超えて全社的な品質リスクを増大させる。

さらに、製品・プロセスの階層では、対象となる製品の特性や、製造プロセス、分析法、設備、原材料、工程管理のあり方に着目する。この階層では、製品品質に直接影響を及ぼし得る技術的因子が中心となる。たとえば、無菌製剤と固形製剤では求められる管理の厳格さは異なるし、高活性物質を扱う工程と一般的な原薬工程でも、リスクの性質は大きく異なる。したがって、製品・プロセス固有のリスクを理解しないまま、画一的なGMP対応を行うことは、過剰対応にも過少対応にもつながりうる。

最後に、作業の階層は、実際の現場における個々のオペレーション、すなわち秤量、調製、ラインクリアランス、サンプリング、記録、点検、清掃、試験操作などの具体的作業のレベルである。この階層では、作業者の行動、手順の明確さ、ヒューマンエラーの起こりやすさ、視認性、作業負荷、ダブルチェックの妥当性といった、きわめて実務的なリスク要因が問題となる。現場で起こる逸脱の多くはこの階層に現れるが、その背景には上位階層の問題が潜んでいることも少なくない。

重要なのは、これらの階層が互いに独立しているのではなく、相互に連関しているという点である。作業の階層で頻発するエラーは、単なる個人の注意不足ではなく、製品・プロセス設計の難しさ、さらには組織としての教育訓練や責任体制の弱さに起因している場合がある。したがって、リスクアセスメントは、ある一階層だけを切り取って行うのではなく、各階層を往復しながら因果関係を捉える形で進める必要がある。

このように階層ごとにリスクを整理すると、「どこに、どの程度の管理を置くべきか」が見えやすくなる。すべてを一律に厳格化するのではなく、リスクの高い階層、リスク寄与の大きい因子、品質への影響が大きい活動に重点的に資源を配分することが可能になる。これこそが、Just sizeなGMP/PQSを設計し、運用するための基本的な考え方である。


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