ICH Q3E (E&L) ガイドライン案の公開について(その2)

Date

2025-09-17

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第2章の適用範囲はその1で解説したので,その2では第3章のリスクアセスメント/コントロールに移ります。

図1としてQRMの全体像が示されています。ここでのリスクアセスメントは化学的特性,安全性及び品質の関連から行うのが特徴でしょう。QRMステップは,その3以降に具体的に示しますので,その2ではここで留めておきます。

図2では,リスクマトリックスを検討する際の考慮事項の概要が示されています。
溶出物のリスクコントロールには,多次元的な評価が重要になります。
品質面に関して言えば,例えば,

  • 製造設備や包装材料と製剤との相互作用
  • 溶出物に寄与しうる設備や部材の化学的・物理的特性及び使用前の処理方法
  • 製造条件及び保管条件(表面積と液量の比率,温度,接触時間,後工程の除去ステップの近さ*及び除去能力等)
  • 製剤の溶出傾向(API,pH,有機共溶媒**,界面活性剤/キレート剤等)

* 除去ステップの近さ(proximity):発生してから除去されるまでの早さととらえるべきで,これには距離的,時間的要素が考慮点となるでしょう。
** 主溶媒では溶解し難い場合の補助的な溶媒

一方,安全性の観点では,溶出物による有害性の可能性(潜在的)を評価することが求められます。その場合,投与経路,患者集団,投与量・頻度・間隔,最大治療期間といった曝露に関する要素の考慮が必要となります。
ガイドラインでは,経口投与の場合,正当化できるのであれば,食品接触安全規制準拠(food-contact safety regulations)で済む場合もあるが,それ以外の投与経路の場合,E&Lの評価が原則必要になるといっています。
※ここで,特定の地域(region)の食品接触安全規制に準拠とある部分はガイドラインには具体的に示されていないので,理論的にはその製剤の市場を考慮しての評価になることが想定されます。リーズナブルな提案だろうとは思われるものの,明確でないことがより複雑な考慮を要する事態になるように懸念されます。

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執筆者

寶田 哲仁 (たからだ てつひと)

現職:株式会社ファーマプランニング シニアコンサルタント


1983年 持田製薬株式会社入社

27年間品質保証業務を経験、この間、製造管理者・品質保証責任者等経験

2016年独立行政法人医薬品医療機器総合機構

GMP・GCTP調査(シニア調査員等)の他、アジアトレーニングセンターにて東南アジア諸国等の査察官指導体制の確立及び運用に関わる

2021年 学校法人東京理科大学研究推進機構総合研究院究

ヒト細胞加工製品のQbDアプローチ関連の研究支援の他、知識管理・品質文化に関する研究

2023年 現職にて、GMP・GCTPコンサルティング(PMDA/FDA対応等)


過去、日本製薬工業協会(JPMA)品質委員会GMP部会委員、ICHでJPMAの専門家として Q7、Q8R、Q9、Q10のガイドライン/Q&Aの作成、PIC/S WGにてAnnex 2A作成、厚生労働科学研究等でGMP省令改正案、GMP監査マニュアル等の作成に関わる。

 現在、継続して、国立保健医療科学院医薬品医療機器の品質確保に関する研修で講師の一人として都道府県の薬事監視員教育に関わる。公益財団法人神戸医療産業都市推進機構外部アドバイザー(GCTP関連)