ICH Q3E (E&L) ガイドライン案の公開について(その3)

Date

2025-09-18

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3.3項のリスクアセスメントに移ります。
リスクアセスメントでは次のことが解説されています。
Step 1 - ハザード特定:既に得られた知識(部材の使用経験,過去の試験等)や抽出物及び溶出物試験に基づき潜在的な溶出物を特定

  • 直接接触面:製造用部材/システム,容器施栓系,デリバリーデバイスの部材
  • 間接接触面:二次包装,特に半透過部材でのラベル用インク又は接着剤

Step 2 - リスク分析:製剤中における溶出物の発現の可能性を定量化し,患者に対する曝露量を評価
Step 3 - 包括的リスク評価:選定した製造部材/システム及び容器施栓系が意図した用途に対して適格かを判断するために,製品の品質,安全性及び有効性への影響の潜在的なリスクを評価

また,3.4項のリスクコントロールでは,リスク低減が必要と判断された場合,対応策は少なくとも次を考慮する必要があるとしています:部材/供給業者の変更、部材の事前洗浄、製造設備の事前フラッシング、追加の精製/分離工程の導入。
部材の適格性が判断された後の管理戦略には,以下を含むとしています。

  • 部材に適した受入基準、分析手順、サンプリング計画を含む適切な受入品質管理を確立すること。
  • 部材の供給業者と適切な品質契約を締結すること。これには、抽出物プロファイルに影響を及ぼし得る組成及び/又は加工工程の変更に関する、部材ライフサイクルに係る品質管理が含まれる。

筆者がこれまで経験的に見てきた部材供給者と製造所との関係からは,このリスクコントロールは申請者にとってはチャレンジングな取組みだろうと推定されるところですが,医薬品を供給する側によってはいよいよこのような取組みが必要な時代に入ったと認識します。因みに,Q3Eのワークプランでは,案に対する意見募集は2025年11月中,ガイドラインの確定目標は2027年11月となっています。リスクコントロールについては,その4に続きます。

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執筆者

寶田 哲仁 (たからだ てつひと)

現職:株式会社ファーマプランニング シニアコンサルタント


1983年 持田製薬株式会社入社

27年間品質保証業務を経験、この間、製造管理者・品質保証責任者等経験

2016年独立行政法人医薬品医療機器総合機構

GMP・GCTP調査(シニア調査員等)の他、アジアトレーニングセンターにて東南アジア諸国等の査察官指導体制の確立及び運用に関わる

2021年 学校法人東京理科大学研究推進機構総合研究院究

ヒト細胞加工製品のQbDアプローチ関連の研究支援の他、知識管理・品質文化に関する研究

2023年 現職にて、GMP・GCTPコンサルティング(PMDA/FDA対応等)


過去、日本製薬工業協会(JPMA)品質委員会GMP部会委員、ICHでJPMAの専門家として Q7、Q8R、Q9、Q10のガイドライン/Q&Aの作成、PIC/S WGにてAnnex 2A作成、厚生労働科学研究等でGMP省令改正案、GMP監査マニュアル等の作成に関わる。

 現在、継続して、国立保健医療科学院医薬品医療機器の品質確保に関する研修で講師の一人として都道府県の薬事監視員教育に関わる。公益財団法人神戸医療産業都市推進機構外部アドバイザー(GCTP関連)