ICH Q3E (E&L) ガイドライン案の公開について(その6)

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2025-09-30

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内容

リスクコントロールの3.4.1の特別な考慮点について以下の記載があります。

複数の製造部材,特に同一又は類似の材料で構成されたものは,累積の影響を溶出物リスクとして評価する必要があります。
また,管理戦略には,必要に応じて原薬(液体又は半固形)を保管する容器からの溶出物の可能性も含めなければなりません。
凍結状態の場合は,凍結前及び解凍後の状況の考慮も必要となります。

加えて,生物薬品,バイオテクノロジー応用医薬品では,以下のリスク特定及び低減を含みます。

  • 反応1性のある溶出物と処方成分との相互作用の可能性の評価,またそれが,品質,安全性,有効性に悪影響を及ぼす可能性があるかの検討。既知の反応性溶出物によりCQAへの影響が見られる場合には,化学的修飾について可能性のあるメカニズム(変性,凝集又は分解等)を考慮すること。
  • 原薬製造では,最終精製工程で溶出物が除去されうるので,リスクアセスメントは通常その後の製造工程にフォーカスする。

3.5項は,申請上の文書の記載に関することです。
申請資料には,製造及び包装の部材/システムについて,実施した抽出物/溶出物試験の正当性、関連する試験報告書、AETを超える物質の安全性評価、および必要なリスクコントロール戦略を含めるべきとしています。

医薬品の有効期間(shelf-life)にわたって,安全性及び品質上の懸念に対応するために十分な溶出物データを提供する必要があります。一般的には,安定性データに整合して溶出物試験結果を提出することは受け入れ可能で,その地域の規制当局の事前の合意により,承認後に追加データを提出することもありうるとしています。

評価手順には,手法の妥当性(検出限界,定量限界,特異性,直線性,精度,再現性等)を含めて記載する必要があります。また,AETを超える全ての抽出物及び溶出物のピークは,化学名,構造,CAS登録番号(可能なら)及び測定されたレベルとともに提出資料に含めます。溶出物(又は適格性の評価に使用された場合は溶出物)については安全性リスク評価を含めます。

品質リスクアセスメントに加え,必要に応じて(4.6項),溶出物と抽出物の相関を申請資料に含めます。さらに,提案されたリスク低減策(包装及びデリバリー部材/システムの予備洗浄又は製造部材/システムの予備フラッシング等)の妥当性を,低減策導入前後の収集されたデータで実証する必要があります。

※ここで,抽出物試験・溶出物試験を終了して,部材を確定した場合にどこまでその部材をCTDに定義するのかという疑問が生じます。部材の材質までか,あるいはその部材のメーカーによっては性質が異なる可能性があるので,型番までかということになります。

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執筆者

寶田 哲仁 (たからだ てつひと)

現職:株式会社ファーマプランニング シニアコンサルタント


1983年 持田製薬株式会社入社

27年間品質保証業務を経験、この間、製造管理者・品質保証責任者等経験

2016年独立行政法人医薬品医療機器総合機構

GMP・GCTP調査(シニア調査員等)の他、アジアトレーニングセンターにて東南アジア諸国等の査察官指導体制の確立及び運用に関わる

2021年 学校法人東京理科大学研究推進機構総合研究院究

ヒト細胞加工製品のQbDアプローチ関連の研究支援の他、知識管理・品質文化に関する研究

2023年 現職にて、GMP・GCTPコンサルティング(PMDA/FDA対応等)


過去、日本製薬工業協会(JPMA)品質委員会GMP部会委員、ICHでJPMAの専門家として Q7、Q8R、Q9、Q10のガイドライン/Q&Aの作成、PIC/S WGにてAnnex 2A作成、厚生労働科学研究等でGMP省令改正案、GMP監査マニュアル等の作成に関わる。

 現在、継続して、国立保健医療科学院医薬品医療機器の品質確保に関する研修で講師の一人として都道府県の薬事監視員教育に関わる。公益財団法人神戸医療産業都市推進機構外部アドバイザー(GCTP関連)