Lean PQS™論考 その5 規範を内在化するということー自律 vs 他律ー

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2025-10-03

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内容

PQSがなぜ形骸化するのかということについて、自律(autonomy)と他律(heteronomy)という観点から考えてみたいと思う。autonomyというのは、古代ギリシャ語 αὐτονομία (autonomía)「自分の法(ルール)を持つ状態」に語源を持つ。PQSやGMPは、国際的なガイドラインによってそのあり方が決まっているが、そのシステムを自社に構築しようとするものは、その態度によって自律的であるか他律的であるかが決まる。

PQSやGMPのコンセプトを真に理解しながら、その運用に落とし込む者は自律的であり、逆に形式的にそれらを模倣する者は他律的である。

PQSやGMPは、ICHのガイドラインや国内の省令や海外の法規制によって要求事項が定められている。製造業者は、それらの内容を基に自社特有のPQS・GMPを形作っていくことになる。そもそも法規・ガイドラインは、あくまで「What(何を)」が記載されたものに過ぎず、「How(いかに)」は自社で検討しなければならない。そして、そのためには、「Why(なぜ)」を理解する必要がある。つまり、なぜそれが必要なのか理解することである。

真に法規・ガイドラインの理解が深まっていないから「形式」を整えるだけになってしまう。その規定の本質を理解しないまま「決められているからやる」という態度はよくない。それこそが他律的な態度である。他律的である場合、従業員は、社内規定の必要性が理解しづらくなるかもしれない。時間の経過とともに、従業員は意味がないと思われる作業の抜け道を探し出し、代わりに「やったふり」が蔓延していく。

自律というのは誰にとっての自律かといえば、各階層の経営陣・従業員にとってということになる(つまり全員)。法規制やガイドラインはある意味で「与えられた」ものかもしれない。しかし、それを自らのノモス(法)として内在化させることが非常に重要となる。そのためには、なぜそれが必要なのかを自問する思考の様式が必要となる。